ベッドで寝たきりの自宅療養中に電話が鳴った。
仕事の依頼はほとんどがメール。
普段は沈黙している電話なのでおもむろに受話器を取った。
「もしもし、お正月用の撮影をお願いしたいのですが。」
20年来のお客様からだった。
入院していて忘れていたが年末の撮影があったのは忘却の彼方に飛んで行ってた。
ベッドからどうにか起き上がってからセガレに手伝ってもらって、俗に言うところの“巨匠”のような撮影をした。
自分では何もせずに手にはグリーンのレーザーポインター。
あれをここに置いてバック紙はこれでライティングはこうやってああやってと口だけで仕事をしたのは初めてだった。
ワタシがやった事と言えばシャッターを押して画面の確認だけ。
巨匠とはこういうものかと妙になっとくした撮影だった。